2013年6月1日土曜日

ブーイングをくれ



完敗に終わった日本代表のブルガリア戦。試合後、DF吉田麻也はサポーターからの拍手に違和感を覚えたとスポーツ報知が伝えている。

 「アイドル歌手のライブじゃないんだから、さすがにブーイングがあってもいい。ホームで0―2の負けは、普通なら(ブーイングは)起こりうる。それが文化でしょう」

よくぞ言ったね。サッカーを熟知している厳しい観客の視線が、チームを成長させることを彼は知っている。

これはサッカーに限らない。歌舞伎役者でもピアニストでも同じだろう。学校の学芸会ならうまくいっても失敗しても拍手をもらえる。だけど観客が観劇の玄人であれば、演じる方も緊張で身が引きしまるに違いない。それが上達につながる。

だから、サッカー選手も目の肥えた観客の評価を受けることが必要なのだ。たとえ、その結果がブーイングであっても。

アルゼンチン-ブラジル戦で興味深い場面に出くわしたことがある。2009年のワールドカップ南米予選。マラドーナ率いるアルゼンチンが、ドゥンガ監督のブラジルをホームで迎え撃った一戦。役者はそろっていた。

この両チームのライバル心は強烈だ。W杯でアルゼンチンが負けるとブラジルで花火が打ち上げられ、国中が祝杯をあげる。逆もまたしかり。

互いに闘志をむき出しにした一戦は、1-3でアルゼンチンの完敗に終わった。ブラジルのカウンターが鮮やかに決まり、アルゼンチンはホームでいいところなく敗れた。

試合後にわき起こったのは、なんと「オーレ、ドゥンガ!オーレ、ドゥンガ!」の大合唱だった。

もちろん、これはマラドーナへの当てつけ。マラドーナはもういらない、というわけだ。

こんな皮肉をこめたドゥンガコールを自然に巻き起こすアルゼンチンの観客は、さすがだ。日本が追いつく日は来るのだろうか。

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