2013年6月24日月曜日

ブラジル人の心をつかんだタヒチ代表~コンフェデ杯=ウルグアイ-タヒチ戦


ウルグアイ-タヒチ戦。スタンドの入りは2万2千人で空席が目立ったけれど、満員の観衆に負けないくらい歓声は大きかった。

もちろん、みんなタヒチの応援だ。相手ゴール近くに球を運ぶと会場は沸き、タヒチDFが後ろでパスをつなぐだけで「オーレ」のかけ声が響き渡る。

ピンチを防げば大きな拍手と「タヒチ」コール。ウルグアイがボールを持ったときには大ブーイングが起きた。

開始2分にCKからゴールを許した後はしばらく耐えていたが、スペイン戦と同じくDFラインの裏を狙われて失点を重ねた。ナイジェリア戦から先発全員を入れ替えたウルグアイと、強豪相手に3戦目のタヒチとでは疲労度の違いも影響したようだ。

それでも必死のプレーは見る人たちに伝わった。2枚目のイエローカードを受けてDFルディビオンが退場した際、観客はピッチから去る彼をスタンディングオベーションで迎えた。退場者へのスタンディングオベーションなんて見たことがない。

世界ランキング138位。プロ選手が1人しかおらず、ほかは教師などのアマチュアだ。タヒチ代表の歴史を通じてオセアニア以外の場所で戦うのも初めてだった。

もちろん、弱者を応援するブラジル人の判官びいきはある。でもそれだけではない感情がブラジル人たちをかき立てたようだ。

タヒチは試合前の握手を交わす際に、相手チームの選手たちに首飾りをかけていた。

スペイン戦の前は、リオデジャネイロのスラム街の子供たちをホテルに招いて一緒に朝食をとり、さらに試合のチケットをプレゼントした。子供たちにとって、スペイン代表の試合をマラカナンスタジアムで見た思い出は一生忘れないだろう。

間違えて「ハイチ」と話すブラジル人も少なくなかったけれど、宿舎にやってきた「にわかファン」たちを快く迎え、サインや写真の求めにもていねいに応じた。

かたやサッカー大国で、かたや太平洋の小さな島国。でも「ビーチと音楽が好きなのは、ブラジルもタヒチも一緒」と彼らは言う。

0-8。試合が終わり、ベンチから飛び出してきたタヒチの控え選手を見て、観客は再び沸いた。それぞれがブラジルの国旗を肩に掲げていたのだ。さらに、「ありがとう、ブラジル」と書いた横断幕を持って観客に感謝の気持ちを伝えた。

試合後の記者会見。FWスティービーは「ブラジル人の温かい応援に本当にびっくりした。心の底からありがたかった」と話した。そして質問に答えて言った。「もしプロになるチャンスが来ることがあれば、なりたい。子供のころからの夢だから」

試合が終わったのは現地の午後6時。翌日午前3時の便で帰国の途に就くという。「選手たちは魂で戦った。ブラジルから離れたくないけれど、厳しい現実に戻ることになる」とエタエタ監督は語った。母国に戻れば、選手たちにはそれぞれの仕事が待っている。

会見が終わると監督は出席した記者たちに歩み寄り、一人一人と握手して回った。こんな光景も初めてだ。

タヒチは試合には負けたけれど、それ以外では勝者だった。自分は握手をしながら「コングラチュレーション(おめでとう)」と声をかけた。会見場を出るとき、記者たちの間から大きな拍手が起きた。

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