2013年4月30日火曜日

「真意」なんて伝わらない



東京都の猪瀬知事が2020年のオリンピック招致に関して、「イスラム諸国は互いにけんかばかりしている」と述べたことが問題になっている。
招致都市の首長の発言だけに、ニュース性は十分。インタビューを掲載したのがニューヨーク・タイムズ紙だったので、この発言は一瞬にして世界中を駆け回った。IOCも注意を喚起する事態に。個人的には、ぜひ東京でオリンピックをやって欲しいので、影響が心配だ。

猪瀬氏は、「他の立候補都市を批判する意図はまったく無い」「私の真意が正しく伝わっていない」と弁明しているが、これは余りにナイーブ過ぎる言い訳だ。

海外で相手に物事を説明する場合、自分の「意図」や「真意」なんて相手は忖度してくれない。口にした言葉がすべてだ。

朝日新聞によると、「猪瀬知事はインタビューのために自ら通訳を用意した。記事で引用した言葉はその通訳が話した内容で、録音もされている」とニューヨーク・タイムズは反論している。これがすべてだ。「確かに自分はこう言ったけど、本当の気持ちは違うんだ」という言い訳が世界に通用すると猪瀬氏は思っているのだろうか。

いかに論理的に相手を説得するか、海外では子供の頃から教育される。文化や民族が違う人たちが競い合い、共存する世界では言葉の持つ意味は日本よりもはるかに大きいのだ。

だから「言葉は通じなくても心は通じる」と教える日本の教育は完全に間違っている。国際社会では「言葉が通じないと心は通じない」のだ。

そもそも、五輪招致を進める知事であるなら、自分自身が英語でインタビューに受け答えすべきだろう。さらに言えば、国際社会において宗教はセンシティブな問題だ。「アラー」を持ち出した時点でアウトだ。

かつては鳩山元首相の Trust me 発言もあった。残念ながら、日本ではいつまでたっても国際性のない人たちばかりが政治のトップに座り続けている。





2013年4月29日月曜日

ブラジルの「安全です」は信じられるのか


リオからサンパウロへ戻るフライトでのこと。

離陸前の滑走路で、異臭が機内を漂った。そして、ガタンという音とともに飛行機が突然停止したのだ。

隣に座っていた女性は「ガソリンの臭いだわ。怖い」と半ばパニック状態に。立ち上がって客室乗務員に呼びかける。

通路向かいの女性は目を真っ赤にして泣き始めた。ざわつく機内の後方では女性が倒れたらしく、乗客の医者が様子を見に行く。ついに救急隊員が呼び入れられ、飛行機はターミナルへ戻った。

機長はポルトガル語でしか説明しなかったのでよく聞き取れなかったのだが、エンジンになんらかのトラブルがあったようだ。ただ「安全には問題ない」とアナウンスする。航空会社の職員も「安全です。通常通り運行します」。

そうは言われたところで乗客が納得するわけがない。次々に立ち上がって荷物をまとめて降りる準備を始めた。

職員は「安全性に問題はありませんが、みなさんの気持ちも分かります。降りたい人は降りても構いません。しかし、通常通り運行するので、ほかの便に変更する場合は料金の支払いが必要です」。つまり、払い戻しはしないとのこと。

さあ、選択だ。はたして乗客は「安全です」の言葉を信用するのだろうか。それともお金を捨てて降りるのか。見ていると、5~6割が降りていくようだった。

職員にくってかかっていた女性は「自動操縦ができなくなっても手動で大丈夫だと言うけど、そんなのは緊急事態じゃないか」。同感だ。でも言ったところで、航空会社が態度を変えるとは思えない。ほとんどの人はあきらめたようにさっさと立ち去った。

もちろん、私も信用なんてしない。

買い直すのはしゃくだから、バスで6時間かけてサンパウロに戻った。

いまのところ墜落事故のニュースはないから、きっと無事に飛んだのだろう。

2013年4月28日日曜日

新しいマラカナンスタジアムにちょっとがっかり


ブラジル人は数字が苦手?って書いたら、同じ趣旨の発言をした日本の大臣がいたようだ。
「ラテン系だから正確な数字がつかめない」とか。

一国の大臣は国益を第一に考えて発言や行動をしなければいけないので、たとえ心の中で思っていても口にしてはいけないことや行動に移してはいけないことはたくさんある。撤回するのは当然。自分が大臣じゃなくて良かった。

さて、新装開店したマラカナン競技場。

普通の、どこにでもあるスタジアムになってしまった。

改修前の2007年に一度だけ試合を見に行ったことがあるのだが、その面影はもうどこにもない。コンクリートの石段にぐるっと囲まれた、どっしりとした趣。最上段から見下ろしたとき、まるで宙に浮いたように感じたスタジアムの大きさ。

それが、こぢんまりと整った、特徴のない場所へと変身してしまったのだ。

中南米には、一度行けばいつまでも心に残るスタジアムがある。メキシコのアステカスタジアムや、ブエノスアイレスのボンボネーラ。そんな場所の一つが消えてしまったようで、残念だ。

FIFAの基準は確かに大事かもしれないが、長年愛され続けた独特の雰囲気を保つように改修できなかったのだろうか。全部が欧州と同じになってもつまらないだけだ。

ちなみに、スタジアム内の男子トイレはこんな感じ。




大画面モニターや音響施設は近代化したのに、トイレだけは昭和。なんでだ。



2013年4月27日土曜日

数字は苦手?


27日にリオデジャネイロのマラカナン・スタジアムでサッカーのイベントがある。コンフェデレーションズカップに向けた改修工事が終わり、ロナウドやベベトらがサッカーの試合をする。

招待されるのは、工事をした作業員とその家族たち。招待人数は、新聞によってまちまち。1万9千人と書いた新聞もあれば、2万5千人と書いたのも。2万1千人もある。

それはともかく、マラカナンの収容人数がはっきりしない。問い合わせると「工事を請け負った会社のホームページに書いてある」と言われ、調べると7万8639人。

念のため連邦政府の公式ホームページでも確認したところ7万8639人とあったので大丈夫かと思ったら、同じホームページ内の別の箇所には7万8838人とも書いてあるではないか!

今朝のグローボ紙も7万8838人。うーん。199席分、いきなり増えたのか。

主催者から送られてきたメールも同じ7万8838人だったので、この数字を使うことに決めた。

取材許可証の受け取りでも混乱が。受付は2人だけしかおらず、手際も悪くて全く進まない。イライラした女性記者はその混乱ぶりを写真に撮り、「記事にしなきゃ」と怒っていた。

午後6時までには全員受け取れることになっていたのが、「8時以降になるかもしれない。それでも準備できない人の分は、明日午前8時にまた来てください」だって。自分は幸い1時間ほどでもらえたけど、出直しの人は「ブラジルの洗礼」を浴びたことになる。

数字とか準備とか、きっちりしたことは明らかに苦手な国民だと思う。


2013年4月26日金曜日

リオデジャネイロでアパートを探す・続き


リオデジャネイロの地形を見ると、海と山に挟まれた細長い土地だというのが分かる。

目の前がビーチでも、ちょっと後ろを振り向けば背後に山が迫っている。その狭い土地に、ビルがひしめいている。

平地に住めない貧しい人たちは山の斜面に張りつくようにスラム街(ファベイラ)を作って生活している。リオのスラム街を描いた映画「Cidade de Deus」に、ファベイラから子供たちが駆け下りて海へ向かう場面があるが、これを見るとスラム街と観光地のビーチがいかに近いのかがよく理解できる。

そんなリオでワールドカップやオリンピックの世界的なイベントが開かれる。

人が流入し、当然のように地価は高騰する。不動産価格はこの5年間で約3倍に、家賃もおよそ2倍になった。その間のインフレ率は30%台なので、いかに土地バブルが膨らんでいるのかが分かる。

だから、貸手側は強気だ。「さっさと契約しないと、どうなるか分からないよ。借りたい奴はほかにもたくさんいるからね」と平気で口にする。ある物件を見に行こうとしたら、「2日前に契約されちゃったよ」と言われたことも。

どこまでが本当で、どこまでが駆け引きなのか見極めるのは難しいのだが、物件が少ないのは事実。理想的な物件を見つけるのは極めて困難だ。そして、しんどい交渉を覚悟しなければならないのだ

2013年4月25日木曜日

リオデジャネイロでアパートを探す



リオデジャネイロに来ている。
事情があって、広めのアパートを借りなければならない。

リオでアパートを貸す不動産屋は、①保証人、②Seguro Fiança のいずれかを要求するところが多いようだ。

①の保証人は、リオに不動産を2件以上持っていることが条件。いきなりこんな保証人を探すのは難しい。

②のセグロ・フィアンサはよく分からないのだが、賃料支払いを保証する掛け捨ての保険のようなものみたいだ。結構高くて、金額は1年あたり、1・5カ月分と聞いた。

外国人が利用できるかどうか手続きも不透明で、Bradesco銀行に問い合わせたところ、「ここ2年間は取り扱っていない」との返答。ホントかな。ちなみにサンパウロには日本企業向けにセグロ・フィアンサを請け負う会社があるようだ。

①も②もダメとなるとアパートを借りるのは不可能なのだが、もうひとつ、③保証金がある。

人脈、アミーゴが幅をきかすブラジル。交渉によっては保証金数カ月分で貸してくれるところもある。人づてでなくても、大家さんによってはオッケーの物件も。

一つ一つ聞いてみて、値下げも含めて交渉する、という作業が続く。

昨日物件をいろいろ案内してくれた人はとても熱心だった。

シャワー室では、「どうだ、この水圧。ジャーって出てすごいだろ! ほら、お湯もちゃんと出る」。「水回りで何かあったら、いつでも連絡してくれればいいから。すぐに何とかするよ」。

シャワーがちょろちょろとしか出なかったり、水回りが悪かったりする物件がきっと多いのだろうな、と逆に少し不安になった。







2013年4月24日水曜日

バルサ完敗!


欧州チャンピオンズリーグのバルセロナ-バイエルン戦、おもわぬ大差でバイエルンが勝った。最近のバルサの調子とバイエルンの戦力を考えると「もしかしたら」とは思ってはいたが、4-0のスコアとは。

バイエルンの前線からのプレスがいかにも効果的だった。バルサはボールを保持するものの、中盤から後ろで回すのみ。ペナルティーエリア内にはほとんど入れず、メッシにいい形でボールが渡った場面はほとんどなかった。

昨年のチェルシーとは全く違い、バイエルンは堂々と渡り合ってきた。対策も完璧だったと言える。バルサ側とすれば、けが人や出場停止が重なったのが痛かったのだろうが、内容的にも完敗。ささやかれている「バルサの終焉」が近づいているのかもしれない。

ちなみにブラジルでも、最大のテレビ局GLOBOが生中継していた。前日からテレビや新聞でも取り上げられており、非常に関心が高い試合だった。世界最高峰レベルのサッカーをテレビで見られるようになり、ブラジル人はいまの自分たちの立ち位置を冷静に把握しているように感じる。

このことについてはまたいずれ、書きたいと思う。


2013年4月23日火曜日

自転車が走ってる


9カ月ぶりにサンパウロに来て驚いたこと。

自転車が走ってる!

日曜日・祝日の決まった時間だけなのだが、中心部のパウリスタ通りをたくさんの自転車が走っている。

ブラジルでは車の運転が荒く、みんな交通ルールを守らない。曲がるときにウインカーを出さないのも当たり前で、歩行者よりも車優先の社会だ。

だから自転車は危険で交通事故に遭う確率が高く、死亡事故も後を絶たない。「サンパウロで自転車に乗るなんて、死ぬようなものだよ」と現地の人たちは口をそろえる。

そのため、都心に住む人たちにとって自転車は交通手段ではなく、趣味の一つになっているようだ。乗るのは公園。近くまで車に載せて自転車を持って行って、公園の周回コースをぐるぐると乗り回す。なんだか変。

そんな状況に異を唱えた人たちが多かったのか、ちょっとだけど道路を自転車が走れるようになったみたいだ。日本と違うのは、中央分離帯寄りの車線を走るということだ。

ただ、自転車専用レーンが設けられていてもルールを守らないと意味はない。実際に、車がレーンを無視して自転車にぶつかる事故が起きているとのこと。

信用されていないのは自転車側も同じ。信号ごとに人が立っており、歩行者が横断歩道を渡る際には旗で自転車を止めている。

コストはかかるけど「性悪説」に立たないと、事故は防げないということだ。もっとも、旗にはちゃんとBradesco銀行のマークが入っていた。ここでコストは回収しているということか。

2013年4月22日月曜日

ポルトガル語>スペイン語は本当?


外国語の習得って、つくづく難しい。
いま苦しんでいるのはヒアリング。
こちらがしゃべっていることはブラジル人に通じても、相手の話していることは理解できないことがよくある。

自分が話すことは通じるのだ。外国人の変なアクセントの日本語でも日本人が理解できるのと同じ。でも、ブラジル人は自分の知らない単語を使って返してきて、それがなかなか聞き取れない。だから、意思疎通が一方通行になってしまう。

質問しても、その返事が理解できない。つらい。
まあ、慣れと単語力だと思っているので、勉強するしかない。

それはそうとして、ポルトガル語を勉強して「お得」なのは、なんとなくだけどスペイン語が分かるようになることだ。感覚としては標準語と東北弁くらいの違いだろうか。

イタリア語とも似ているみたいだ。サッカー日本代表のザッケローニ監督のインタビューが、ところどころ理解できるのはうれしい驚きだった。だからって役に立つわけではないけれど。

ブラジルにも、スペイン語圏の国々から多くの学生がポルトガル語を学びにやってくる。
彼らは3日もたたないうちにポルトガル語を話せるようになる。うらやましい限り。
ただ似ているとは言っても、別の言語。ビジネスで使うにはしっかり勉強するしかない。
2年間、みっちり大学に通って身につけるスペイン語圏の学生も数多くいる。

ところで、ブラジル人の先生が好んで披露していたジョークがある。

「スペイン語圏の人たちがポルトガル語を理解するのは、ちょっと難しいようだ。でも、ブラジル人はわりと簡単にスペイン語を理解できる。なぜだか分かる?」

発音が難しいのか。それともポルトガル語の文法がスペイン語に比べてやや複雑なのか。
なんでだろう?

「ブラジル人の方が、彼らより賢いからさ!」





2013年4月21日日曜日

ポルトガル語を勉強しよう!


いま、日系企業が次々とブラジルへやってきているそうだ。
その数、500社に達したとも聞く。
長引く不況で一時減っていたのが、最近再び増えているのだ。

資源や食糧が豊富な「希望の国」。BRICsの一員として経済成長を続けており、
1億9千万人を抱える市場は魅力的だ。来年のサッカーワールドカップや2016年リオデジャネイロ五輪などのイベントも控えてビジネスチャンスが広がっている。
中国の反日暴動の影響で、ブラジルへシフトする企業も多いようだ。

そこで日系企業向けのビジネスが生まれる。
不可欠なのが人材。いま、日本語とポルトガル語を話す通訳の需要が増えているのだ。

ブラジルには140万人とも言われる日系社会があるが、その多くはブラジル社会に溶け込んでいる。お年寄りを除くと日本語を話さない人が大多数を占める。
だから通訳を探すのは難しく、需要に供給が追いつかない事態も起きる。

通訳を雇うにはいくらかかるかをある会社に尋ねると、1日8時間で5万円前後!
レベルによっては1日8万円の人もいるとか。

ブラジル人が日本語を勉強するのは大変だ。サンパウロ大学で日本語を勉強した友人に聞くと、1年目は20人以上が日本語の授業を受けていたのに、卒業時には5人ほどに減っていたそうだ。

それに比べるとポルトガル語の習得は簡単、なはず。

さあ、いまからポルトガル語を勉強しよう!
まだ間に合うかも。

parque do ibirapuera



サンパウロのイビアプエラ公園をウオーキングした。

天気は快晴。お年寄りから子供まで、多くの人たちが楽しんでいる。
ジョギングするひと、スケボーをするひと、ローラースケートを楽しむひと、犬の散歩をするひと・・・

ブラジル人の語学学校の先生が言った言葉が、面白くて的を射ている。

「サンパウロには、ビーチが二つあるんだ。それはイビアプエラ公園と、ショッピングセンターだよ」

確かに、サンパウロには憩いの場所や観光の目玉が多くない。ビジネスの街なのだ。
うろ覚えだけど、観光客の平均宿泊数は、2泊ほどだったと思う。

友人や知人が訪れた際に案内するとしたら、
リベルダージ、サッカー博物館、市場(大きなサンドイッチを売っている)くらいだろうか。

その数少ない「ビーチ」が、この公園。

明日も晴れたら歩くことにしよう。