2013年5月31日金曜日

W杯応援グッズ「カシローラ」、製造会社の巻き返し策とは?


来年のワールドカップでブラジルが「公式応援グッズ」として売りだそうとしている「カシローラ」。個人的に注目していて、W杯応援グッズのカシローラは流行る、と思う・・・、と書いていたのだけど、雲行きがあやしくなってきた。

地元メディアによると、ワールドカップ組織委員会の安全部門の責任者が「コンフェデ杯でのカシローラの使用禁止を決めた。組織委員会と連邦政府が一緒になって判断した」と話しているという。

責任者は「(カシローラだけでなく)あらゆる楽器のスタジアムへの持ち込みは認められない」としているけれど、観客がカシローラを次々とピッチに投げ込んだサルバドールでの事件がこの判断に影響していることを認めている。

もし決定が事実なら、コンフェデ杯での使用禁止はカシローラ製造会社にとって大きな痛手になるだろう。前回南アフリカW杯で観客が使った楽器「ブブゼラ」は前年のコンフェデ杯で世界に認知され、翌年の流行につながった経緯があるからだ。

ところが、カシローラを公式グッズと認定しているブラジルスポーツ省は「まだ政府の正式決定ではない」と抵抗している。

カシローラを製造している「The Marketing Store」という会社も、まだあきらめてはいないようだ。「コンフェデ杯での使用が認められるよう、連邦政府と相談し、解決策を模索しているところだ」という。

で、その解決策とは?

同社の地元メディアへの説明によると、カシローラをより軽く、より軟らかくすることで安全性を高めることらしい。具体的には、90グラムのカシローラを78グラムへと軽量化するとのこと。

こんなので大丈夫?


2013年5月30日木曜日

ゲイかどうかを知る方法



ブラジルは性愛についておおらかで、ゲイの人たちも目立つ。開放的な人が多いからかも。

年に1度のゲイパレードは、サンパウロ中心部のパウリスタ通りを歩行者天国にして盛大に行われる。今年は6月2日。踊ったり歌ったりしてみんな陽気なイベントだ。

どんなものか見に行ったことがあるけど、「お兄さん、食事でもどう?」と何度か声をかけられて、ちょっとびびってしまった。1人で歩くのは何となく勇気がいる。

通っていたポルトガル語の語学学校も、先生、生徒ともにゲイが多かった。男の先生が教えていたあるクラスの生徒は、男3人と女4人。でも、そこで学んでいたスイス人の友人はいつもぼやいていた。

「『男』は俺1人しかいないんだよ」。そう。先生もほかの男2人もゲイだったのだ。

ドラマには必ずと言っていいほどゲイが登場するし、ディスカッションの練習にも同性愛がテーマの一つに選ばれる。ほとんど流行みたいだ。

日本では周りにゲイの知り合いがいなかったので最初はやや戸惑ったけど、やがて普通に友人として接すればいいのだと思うようになった。

ただ、「男同士」でよく交わす「いい女」の話をしても仕方がないので、相手がゲイかどうか知っておくにこしたことはない。

一つ悩みがあった。同じクラスのアメリカ人男性のことだ。

彼はいつも恋人のことを話すとき「namorado(ナモラド)」という言葉を使っていた。Namoradoは男性名詞。だから男の恋人を指す。女の恋人なら「namorada(ナモラダ)」だ。

問題なのは、英語には男性名詞や女性名詞が無いためアメリカ人は頻繁に間違えてしまうこと。日本語にも名詞の性別が無いので、自分もよく間違える。特に初心者はごちゃごちゃになるのが普通だ。

さて、彼は「ナモラダ」と間違えているのか、それともゲイだから「ナモラド」で正しいのか。しばらく聞き出せずにいた。

どうしたらいいものか。

知り合いのブラジル人に相談してみた。そしたらいいアイデアを教えてくれた。「恋人の名前を聞けばいいんだよ。答えがフェルナンドのような男の名前か、アンナのような女の名前かで簡単に分かる」。そうか。

ある日、彼と一緒にランチを食べる機会が訪れた。いよいよ聞いてみるかと思ったとき、彼はおもむろにほかの友人と英語でしゃべり出した。

その瞬間、はっきりと口にしたのだ。「My boyfriend」と。

やっぱり彼もゲイだった。

2013年5月29日水曜日

ネイマールのテレビドラマが再現!?


まさにドラマが再現された。登場人物はネイマールだ。

サッカーよりもドラマなのかで取り上げた夜のテレビドラマ「Amor à Vida」。実は月曜日に、ネイマール本人が出演していた。筋書きはこう。

玉の輿をもくろむ女の子が、ネイマールに狙いをつけて接近を試みる。まずはネイマールが出場する試合のハーフタイムに挑戦。警備員をたぶらかして控室に侵入しようとするが、もう少しのところで失敗する。

次に、ネイマールが宿泊するホテルを突き止め、知り合いの清掃員のおばさんを買収する。掃除のふりをして部屋に忍び込み、彼がシャワーを浴びている隙にベッドへ。そこで、出てきたネイマールを誘惑するのだ。

どうやらネイマールはテレビが嫌いではないらしく、ドラマ出演も初めてではないとのこと。メークアップを受けている様子もニュースになっていた。

ここまでが前置き。

Globoによると、事件はこの場面が放映された翌日に起きた。ドラマに触発された女性ファンの集団がネイマールを目当てに、ブラジル代表が宿泊するリオデジャネイロのホテルに詰めかけたのだ。

ネイマールが到着すると、彼女らはホテルへの乱入を試みた。そして、アリンという女性は警備員をかわして進入に成功。ネイマールが乗ったエレベーターの近くまで接近してしがみつこうとした。

だが、直前で警備員に取り押さえられて失敗。「ネイマール、愛してる!」と叫びながら、彼女は連れ去られてしまった。

最後に発した言葉が面白い。ネイマールの近くにいたDFダビド・ルイスに向かって「ダビド、私を手伝って!」と叫んだそうだ。


カーリングをサッカーに例えれば


昨年のこと。なんと、カーリング世界選手権をブラジルのケーブルテレビが生中継しているではないか。

雪も降らないブラジル。冬季スポーツの不毛地帯に、カーリング人口って何人いるのだろうか。こんなの見る人いるのかなあと思いながらも、ついつい見入ってしまった。

野球がメジャースポーツで、複雑なルールに慣れている日本人ならともかく、ブラジルにカーリングは敷居が高すぎる。もちろんブラジル人のアナウンサーは百も承知で、視聴者がルールを理解していないのも織り込み済みだった。

最後にスーパーショットが飛び出た場面。アナウンサーは叫んだ。「ロスタイムにペレが決勝ゴールを決めたような一投です!」

なるほど、これなら分かりやすいかも。さしずめ日本なら「逆転サヨナラホームランだ!」と表現するだろう。

とにかく、どんなことでもサッカーが絡む。あるバラエティー番組ではでっかいビリヤード台を作り、サッカーボールをビリヤードの玉のようにして遊んでいた。

週末のF1レースの中継でも、ネイマールのバルセロナ移籍の話が長々と続いた。この国にいる限り、サッカーから離れることは難しい。

2013年5月28日火曜日

ネイマールへの大ブーイング



サントスでの最後の試合を迎えたネイマール。試合前の国歌斉唱で感極まって涙を流した場面を、テレビは何度も伝えている。

ところが、試合中はボールを持つたびに対戦相手フラメンゴのサポーターから大ブーイングが浴びせられたという。「ブラジルの至宝」のお別れ試合も、フラメンゴのファンにとっては全く関係ない。敵チームの憎むべきエースストライカーでしかないのだ。

同じような場面を見たことがある。8年前、ワールドカップ欧州予選のイタリア-スロベニア戦でのことだ。会場はイタリアのシチリア島にあるパレルモ。勝てばW杯出場が決まる一戦だった。

ところが、イタリア代表FWのトニがボールを持つたびに、会場から大ブーイングが響き渡った。これが試合を通して続く。彼にとっては、完全にアウエーの雰囲気だった。
トニは地元パレルモからフィオレンティーナへ移籍したばかりで、ファンはこれを「裏切り」だと非難していた。イタリア代表の試合だろうが、勝てばW杯出場だろうが、関係なかった。クラブを裏切った行為を糾弾することが、観客にとって何よりも大事だったのだ。

結局、試合はイタリアが勝ってW杯の切符を獲得した。でも、試合後の記者会見でそれについての質問は一切なく、すべてがトニへのブーイングに関する質問ばかり。ミックスゾーンでも各選手にブーイングについてどう思うのかを地元記者たちは聞いていた。

ネイマールやトニへの大ブーイングは、自国代表への思いよりもクラブ愛の方がはるかに強いことを示している一例だ。そこにブラジルやイタリアの底力が表れている。日本で同じようなブーイングが起きたとき、日本もサッカー大国になれるのだと思う。

2013年5月27日月曜日

ネイマールとバルサ、移籍発表のやりとりが面白い



ネイマールはバルセロナに移籍するのかと書いたところ、あっという間に契約が決まってしまった。

ところで、ネイマールがバルセロナ移籍を公表した経緯は、なかなか面白かった。ネットを見ていると、リアルタイムで動いていったのだ。

まず、午後10時ごろネイマールがツイッターでつぶやいた。「ここに友達や家族がいて、書くのを手伝ってくれている」と始まり、「月曜日まで待てないよ・・・家族も友人たちも自分の決断を知っているんだから」と続けた。そしてバルセロナとの契約を公表した。

すると、その1時間後。バルサの公式ツイッターが反応する。

「ツイッターなどでニュースを公表したネイマールは」というのが書き出しだ。「バルサで来季から5シーズン、プレーする」と明らかにした。

さらに「welcome to FC Barcelona!」と祝福。それを見たネイマールは、さっそくそのつぶやきをリツイートした。
ネイマールのフォロワー数は約680万人。バルセロナは約900万人。プレスリリースも記者会見もなく、ネット上の友人同士のようなやりとりだけで世界中に移籍ニュースを知らせることになった。

ネットを通じた発表で思い出すのは、柔道の野村忠宏選手の5年前の出来事だ。野村選手は選考会に敗れてオリンピック出場権を逃し、引退するかどうかがマスコミの大きな関心事となっていた。ところが、負けたあとは全く公の場に姿を現さない。結局、自身のブログで現役を続けることを明らかにした。

この時、ほとんどの記者は頭にきていたと思う。勝っているときはマスコミの前に出てベラベラ話す。なのに負けると引っ込んでしまい、ブログを通じてしか自分の考えを述べないのは、五輪3連覇を果たした偉大な柔道家としておかしいのではないか、と。

対照的だったのは、勝っても負けても堂々としていた井上康生選手。彼は五輪出場を逃した試合のあと、報道陣の前で号泣した。しばらくして気持ちを鎮めたあと、つらい質問に歯を食いしばって答え続けた。同様に野球の松井秀喜選手が人気があったのは、いいときも悪いときも常に正面から応対していたからだ。

いまはブログやツイッターという便利なツールがあるから、著名人はそれをうまく使う。スキャンダルに見舞われた芸能人は公の場から姿を消し、ブログなどで心境を報告することも多い。でも、そんな行動はみんなしっかり見ている。

橋下・大阪市長が質問の内容に「逆ギレ」して囲み取材を取りやめたものの、すぐに復活したのは、そのことをよく知っているからだろう。橋下市長もツイッターを駆使し、フォロワーも多い。しかし、それだけに頼って真正面から応対するのを避けると、信用を落としてしまう危険性があるのだ。

ともかく、ネイマールにはバルセロナで頑張って欲しい。ツイッターで「ブラジルに帰りたい」なんてつぶやきは見たくないから。


2013年5月26日日曜日

ネイマール「行くよ、でも戻ってくる!」



ネイマールの移籍が正式に決まった。バルセロナかレアル・マドリードのどちらかを選ぶことになるが、バルセロナに決まりとの見方が圧倒的だ。

地元スポーツ紙「ランセ」の一面は、メッシとネイマールのユニホームを着た子供を並べた写真だ。レアル関係者が「(バルサとの)競争には負けた」と話しているという記事も載せている。

契約金が欲しいサントスは売り時を探っていたし、バルサとの交渉は以前から報じられてきただけに、驚きは少ない。受け止め方もおおむね好意的だ。「いままでサントスでよくやってくれた。バルサでも頑張れ」という論調だ。ネイマールはロッカールームの壁に「俺は行く。でも戻ってくる!」と書き残したらしい。

今日はほかの取材でたまたまサントスを訪れたので、タクシーの運転手といろいろ話をした。「ネイマールがいなくなって寂しいね。でも、バルサに行くのはいいことだ」と運転手。意外と冷静な見方をしていて、「サントスではピッチ上でフェスタ(お祭り)をしていたけど、向こうでは組織的にプレーしないといけない。適応しないとダメだし、ベンチを温めることもあるだろうね」と解説者のような見解だった。

取材の帰りの運転手は35年間サントスに住んでいる人だった。「残念だね」というのは行きの運転手と同じ。「ヨーロッパに行ったらまず筋肉をつけなきゃ。ネイマールは華奢すぎる」というのが彼の考えだ。ヨーロッパではフィジカルが強くないとダメだ、というのがブラジル人に多い考え方だが、それには異論もある。

「サントスは弱くなるだろうね」とも話していたが、どうもそれほど悲しんでいないようだった。突っ込んでみたら、白状した。「実は俺、コリンチャンスのサポーターなんだよ」だって。

2013年5月25日土曜日

ブラジルは弁護士もイイカゲン


ブラジルは何でもかんでもイイカゲンだが、やっぱり弁護士もそうだった。

リオデジャネイロでアパートを探すで書いているが、不動産探しはやっぱり大変。あいかわらず契約交渉で振り回されているのだが、大家側の弁護士から送られてきた契約案を見て驚いた。

家賃の金額さえ書いていないのだ。契約期間も間違っている。支払うべき保証金についても記述がない。つまり、重要なことが何一つ正しく書かれていない!

こちら側の弁護士に契約書案を見せて、必要な条項を加えてもらうことにした。しかし、戻ってきた文案もイイカゲンなもので、重要事項がところどころ抜け落ちている。仕方ないので、自分たちで文案を作って送り返すことにした。

そもそも、不動産仲介業者からしてイイカゲンだ。物件の所有者の名前をメールで尋ねたら、「物件を見せたとき、●●に会っただろう。彼の奥さんだ」との返事。そんな名前なんて無いやろ!

弁護士も業者も、約束した期限なんか全く守らないので、やりとりをしていくうちに時間が過ぎていく。だから、いつまでたっても入居できないことになっている。

この後、銀行口座の開設、電話やインターネットの整備などやることはいっぱいあるのだが、どうせスムーズにいかないに決まっている。しょうがないなあ。

対処法はただ一つ。期待しないことかな。


2013年5月24日金曜日

ネイマールはバルセロナに移籍するのか


ネイマールの移籍に関する報道が過熱している。グローボ電子版は、バルセロナが提示した2000万ユーロ(約26億5000万円)の移籍金をサントスが拒否した、と報じている。以前にも1800万ユーロの提示を拒否しているとしており、今回は上積みがあったものの、合意には至らなかったようだ。

サントス幹部は「レアルマドリードも興味を示しているが、具体的なことは話せない」と語っており、獲得競争は激しさを増している。ネイマールのサントスとの契約は2014年のワールドカップまで。本人は「契約は2014年まである」と言っているものの、「クラブと自身にとって最良の選択をしたい」と移籍の可能性を匂わせている。

ネイマールはブラジルではありとあらゆるCMに出ている。圧倒的な市場価値があるだけに、サントス側としてもそれに見合うだけの移籍金が欲しいところ。一方で、契約が満了する前に売って移籍金を手に入れたいという思惑もある。

本人の胸中はもっと複雑だろう。ブラジルにいれば王様だが、バルセロナでは数多いスター選手の一人に過ぎない。最初はヨーロッパのサッカーに戸惑いがあるだろうし、スタメンの座さえ確約されているとは言えない。最近の例では、パトもミランで故障が続き、結果を残せずに帰国している。

来年の地元W杯を前に欧州へ移籍するのはリスクが伴う。若さは環境の変化に適応しやすいとも言えるし、逆に人生経験の浅さが失敗を招く可能性もある。

ネイマールは果たしてヨーロッパでチャレンジするのか、ブラジル中が注目している。


2013年5月23日木曜日

サッカーよりもドラマなのか


午後9時のドラマ「Amor à Vidaが今週から始まった。この午後9時台のドラマは、日本で言えば朝の連続ドラマや大河ドラマのようなもの。人気絶大で、常に話題にのぼる。その裏返しに、人気がないと途中で主人公が代わったりすることさえあるという。

ブラジルのサッカーの試合が夜遅く始まるのは、このドラマのせいらしい。9時台のドラマが終わらないとキックオフできないのだ。

昨年は「Avenida Brasil」(ブラジル通り)というドラマが人気になった。金持ちの暮らしとスラム街に住む人たちとの対比。老若男女を問わない色恋沙汰。サッカー選手の実態など、ブラジルの社会をよく映し出していてすごく面白かった。ポルトガル語がもっと分ったら、より楽しめたと思う。このブログの題名も、このドラマからとった。

Amor à Vida」も、出だしからジェットコースターのような展開だ。金持ちの家の女の子が、ペルーのマチュピチュでヒッピー風の男と恋に落ち、自由を求めて逃げ出す。妊娠するが、カネがなくなりブラジルに戻る。相手の男は麻薬所持で逮捕。女の子はバーのトイレで出産し、失神。女のことが嫌いな兄がそれを見つけ、赤ちゃんを運び出してゴミの山に捨てる。妻と赤ちゃんを出産時に同時に亡くした別の男が、そのゴミの山の上の赤ちゃんを見つけて拾い上げる。その男と、出産した女が偶然、病院で出会う。

ポルトガル語の能力が乏しいため、何を話しているか全く理解できない場面もあるが、ストーリーはおおむねこんな感じだ。

面白いと思うのは、これが現実にあり得そうなことだからだ。もちろん、こんな劇的な展開はないだろうが、社会状況や人々の考え方は現実を反映している。逆に、日本ではこうした劇的、あるいは悲劇的な現実がないから、職業モノや刑事モノ、歴史モノのドラマが多いのだろう。

ともかく、勉強も兼ねてブラジルのドラマを楽しみたい。

2013年5月22日水曜日

サッカースタジアム内での殺人



サンパウロ州選手権決勝でコリンチャンスに敗れたサントスのサポーターと警官隊が衝突した、とテレビ局グローボが報じている。

経緯は建物の上から撮影された映像によって、はっきりと分かる。まず、サポーターの旗を取り上げようとして警官隊とサポーター集団がもみ合いになった。人数で劣る警官隊は催涙弾(?)を発射してなんとか遠ざけようとする。だが、サポーター側は投石で反撃。小さく固まって守ろうとする警官隊に向けて机までが投げられた。

やがて応援隊が到着して次々と催涙弾を発射。最後には騎馬隊までが登場してサポーター集団を蹴散らした。

どっちもどっちだが、警官隊が少人数と見るや取り囲んで石や机を投げつける集団はやっぱり危ないとしか言いようがない。

この日は死者が出なかったものの、ブラジルではファン同士の争いによる死者が年間2けたにのぼっている。その9割がスタジアム外での争いだ。

残りの1割がスタジアム内での暴力によるものなのだが、その方法は計画的だという。

ナイフなど危険物の持ち込みは入り口で厳重にチェックされる。だが「危ない」サポーターはそれを女性に持たせるのだという。スタジアムに女性警官は少なく、女性に対するボディーチェックは緩いため、ナイフの持ち込みも容易だ。それをスタジアム内で受け取り、争いが起きたときに持ち出して使うらしい。

熱狂的なのはいいが、ここまで来ると病気だ。

2013年5月21日火曜日

花粉症の症状が止まった


ブラジルに来て良かったことの一つは、東京で苦しんでいた花粉症の症状がぴたりと止まったことだ。

これまで症状が出たことはなかったのだが、今春の花粉は例年よりも多かったらしく、自分にもついに症状が出た。目がしょぼしょぼしてかゆくなり、くしゃみが出るようになった。ああ、これが花粉症かあとなんだか新鮮な気持ちでいたのだが、どうせブラジルに行くからいいやと我慢していた。

やっぱりかかってみないと分からないんだな。不快な日々が続くと気分が落ち込んでくる。それまであまり気にしていなかった、同じ苦しみの人たちに目が向くようになった。

すると、いるいる。マスクをつけた人たちがいかに多いのか、改めて分かった。これほど多くの人がマスク姿で歩く光景は世界でも珍しいのではないだろうか。薬局にも様々な種類のマスクや花粉症用の薬が売っている。もはや一大産業だろう。

多くの都民が苦しんでいるのに、何か対策は講じていないのか。調べると、ちゃんとあった。「東京都花粉症対策本部」というのが設置されており、花粉の少ない森づくりを目指しているという。広葉樹や花粉の少ないスギに植え替えていくらしい。募金も呼びかけている。「花粉の少ない森づくり運動」の会長は養老孟司さんだ。

そもそも、戦後の植林事業でスギを増やしたのが花粉症の原因だ。木材価格の低迷で林業が衰退、そのままほったらかしにされた。そのツケが回ってきて、みんなが苦しむようになった。時代の要請だったとは言え、その解決に募金までお願いしている。なんだかなあ。

ともかく、ブラジルに来て花粉症から解放されたのはうれしい。マスク姿の人も、1人も見ていない。

2013年5月20日月曜日

サンパウロ州選手権、コリンチャンスが優勝


コリンチャンスが試合をしているとすぐ分かる。バンバン花火が打ち上がる音が鳴り響き、サポーターの叫び声が外から聞こえるからだ。

今日もうたうた昼寝をしていたら、花火の音で目が覚めた。そうだった。サンパウロ州選手権の決勝だった。

テレビをつけると、コリンチャンスとサントスの試合はすでに始まっていた。「コリンチャンスは組織力、サントスはネイマールを中心とした個人技に頼るチームだ」と解説者が話している通りの試合展開。サントスはネイマールの強引なドリブルで突破口を開こうとするが、コリンチャンスの守備陣はしっかりとシュートコースを塞いで守る。

とにかくコリンチャンスのディフェンスラインがよくコントロールされていた。最後までラインを高く保ち、何度もオフサイドを誘った。サントスは学習能力があるのかと思われるほど同じ手に引っかかり続けたが、これはコリンチャンス守備陣をほめるべきだろう。

試合中、コリンチャンスとサントスはブラジル全国選手権を勝てる可能性があるだろうかという話題が挙がった。コリンチャンスには可能性があるが、サントスは難しいとのこと。ネイマール頼みのサントスは控え選手層も薄いのが低評価の理由のようだ。ネイマールにはバルセロナ移籍の報道も出ており、今後が注目される。

試合は1-1で終わり、ホームで勝っていたコリンチャンスが優勝を決めた。サントスの4連覇はならなかった。後半40分ごろにはコリンチャンスサポーターが発煙筒をピッチに投げ込み、試合が一時中断した。今夜はリベルタドーレス杯で敗退が決まった鬱憤を晴らした彼らの宴が続くだろう。

2013年5月19日日曜日

一番嫌われているのはアルゼンチン人?


あえて言い切ってしまうと、ラテンアメリカで一番嫌われている国民はアルゼンチン人だろう。もちろんアルゼンチン人のすばらしい友人もいるし、彼らのことは大好きだけど、ラテンアメリカ世界での見られ方は共通しているようだ。

南米で最もヨーロッパの薫りを漂わせる国に住む彼らは、実に誇り高い。別の言葉を使えばナルシストが多い。男はかっこよく決めているし、女性はキレイだ。本場のタンゴを見ると、やっぱりアルゼンチンの男女だから「決まる」んだと思ってしまう。

ただ、いつも「自分が、自分が」という思いが表に出るためか、協調性に欠ける。だから、サッカー代表チームもタレントは山のようにいるのに、組織力で負けてしまう。前回のW杯ではおとなしいメッシがパスを出す役回りをさせられるのだから勝てるわけがない。それでもなんとか出場権を得てベスト8まで持っていけたのは、ひとえにマラドーナというカリスマのおかげだろう。

サッカーの話で言うと、メキシコを取材した際に「メキシコ人は実はおとなしい性格だから、気が強いアルゼンチン選手が苦手なんだ」と聞いたことがある。逆に言えばFWに必要な要素を持ち合わせているということで、実際、世界的なストライカーは多い。

アルゼンチンに留学をしていた同僚に聞くと、女性もみんな気が強いのだという。「キレイなんだけど、付き合うのは大変そう」というのが彼のアルゼンチン女性評だ。陽気で優しいブラジル女性とは性格が違うようだ。

アルゼンチン人についてのジョークをひとつ。

父親と息子が散歩をしながら会話をしていた。
父「息子よ、大きくなったらどんな大人になりたい?」
息子「大きくなったらパパみたいになるんだ」
喜んだ父親は息子に聞いた。
父「どうしてパパみたいになりたいの?」
息子「だって、僕も自分が一番好きだから」

2013年5月18日土曜日

ブラジルの殺人件数のなぞ


ブラジルでは年間何件の殺人事件があるのだろうか。こんな基本的な数字でさえ、この国では調べるのが難しい。

ネットで殺人被害者数を検索すると、最新の数字は2010年の4万9932人で、地元調査機関の発表とある。これは各州警察の数字を合計したものだが、2011年分はまだ出ていない。調べると、まだ11年分を公表していない州がいくつかあるからだという。3年前の数字が最新とは。

もうひとつの数字がある。2010年の5万2260人というものだ。保健省の数字だ。どうして異なるのかと言えば、「殺人」の定義の違いだそうだ。

たとえば、警察官が強盗と撃ち合いになって相手を射殺した場合、警察集計では「殺人」に分類しない可能性がある。だから、4万9932人という数字は国際基準に沿っておらず、国際的には5万2260人を使うのだという。

7月にローマ法王がリオデジャネイロを訪れるが、治安面の改善をアピールするため「リオ州警察は分類方法をごまかして殺人件数を減らして見せるのでは」との指摘もある。全く信用できない。

ちなみに日本の昨年の殺人件数は1030件。どっちにしても、日本とは桁違いの数字だ。

2013年5月17日金曜日

橋下発言の問題点


橋下徹・大阪市長の発言が物議をかもしている。第2次世界大戦中の従軍慰安婦を「必要だった」とし、沖縄の米軍司令官に対して風俗業の活用を提言したことなどが非難を浴びている。

本人は「建前ではなく、本音で話すべきだ」と発言の理由を述べているが、ここに大きな間違いがある。

「アメリカとかであれば、建前と本音をきちんと使いわける社会かも分かりませんけれども、僕はそういうことをやってこなかったのでね」というのが彼の主張。恐ろしいほど国際感覚と教育が欠如した考え方だ。

たとえば差別について考えるとき、最も大事なのはそれを言葉や態度で表さないことだ。もしだれもが全く差別意識のない聖人君子で、マザー・テレサのような人たちばかりだったら、それは必要ない。でも、現実にはあり得ない。だから、言葉にしないこと、態度に出さないことが重要なのだ。そして、それは教育によってたたきこまれる。

いい例えではないかもしれないが、仮に太った女性が隣に座ったとする。「デブだなんて思っちゃいけない」、と教えるのは現実的ではない。大事なのは、それを口に出さないことなのだ。

アメリカでもヨーロッパでも差別は厳然として存在する。人種や民族、宗教が混在する分だけ日本よりも差別は多い。だからこそ、「建前」と「本音」の使い分けが非常に大切なのだ。アメリカでも黒人や黄色人種に対する差別意識がある白人はいまだに多いと思う。でもそれを口にした途端、その人の知性や教育が疑われ、社会的地位まで脅かされることになる。つまり、差別というのは言葉にした瞬間に発生するものなのだ。

記者団とのやりとりを読むと、橋下氏が言いたいことは理解できないこともない。「男には性欲があるじゃないか。風俗行って発散すればいい」というのが彼の言い分のようだ。サラリーマンの男同士が飲み屋の3次会あたりで話す分には「有り」かもしれない。でも、橋下氏は政治家であり、相手はアメリカの軍司令官だ。

「建前と本音を使い分ける」ことは、国際社会では基本中の基本だ。猪瀬・東京都知事の五輪発言に続き、立て続けに問題が起きている。国際社会の初歩さえ分からない政治家が、東京と大阪のトップにいるなんて。


2013年5月16日木曜日

W杯応援グッズのカシローラは流行る、と思う・・・


来年のワールドカップに向けてブラジルの音楽家が考え出した新しい応援グッズが「カシローラ」。小さな釣り鐘のような形で、プラスチック製だ。振るとシャカシャカとマラカスのような音が出る。南アフリカ大会でブブゼラが流行ったので、2匹目のドジョウを狙ったというところか。

だけど、この新しい楽器の評判がよろしくない。「南アは昔からブブゼラで応援する伝統があったけど、ブラジルの応援にカシローラなんて使ったことないじゃないか」というのがその理由だ。

実際、試合会場で観客に無料で配って使い方の「レクチャー」をしたものの、反応は薄い。さらに、失点に怒ったサポーターが試合中に次々と投げ込み、ピッチにカシローラの雨が降った。形も悪かった。ちょうど投げやすい形状で、雑誌「Veja」の記事では、手榴弾のイラストを横につけて皮肉っていた。

もっとも、投げられることは想定していたらしい。製造元のアメリカの会社は「薄くて軽量化しているから遠くまで飛ばないし、けがもしない」と説明しているという。ただ、スタジアムがW杯仕様で新しくなったことが誤算。ブラジルのスタジアムは暴動に備えてピッチから遠かったり金網が張ってあったりするのだが、世界基準のW杯スタジアムはピッチとスタンドとの距離が近い。それで、ピッチ内まで届いてしまったというわけだ。

カネの匂いがプンプンするのも、不評の一因みたいだ。値段は1個29・90レアル(約1500円)。カリニョス・ブラウンという音楽家が考え出したのだが、マクドナルドとも提携しているらしい。このブラウン氏、金儲けじゃないのかと聞かれて「金儲けして何が悪い」と開き直った態度をとっている。

FIFAや地元のW杯組織委員会はスタジアムへの持ち込みをどうするか検討する、と言っている。「カシローラの雨」が降ったサルバドールでは禁止されるとの報道もある。でも、マクドナルドはW杯の大事なスポンサーだし、ジルマ大統領までカシローラを絶賛してしまった以上、全面禁止にするわけにはいかないのではと思う。

まあ、W杯は外国から来るサポーターが多いし、彼らは投げ込まないだろう。手頃なお土産としてもそこそこ売れるんじゃないか、というのが僕の予想だ。自分も1個ぐらい買うかな。