2013年5月10日金曜日

ひっかかる川口氏の委員長解任



参議院環境委員会の川口順子委員長が解任された。常任委員長の解任は憲政史上初らしい。このニュース、ずっと腑に落ちなかったのだが、詳しい記事を読んでようやく分かった。

ひっかかっていたのは、どうして全野党が共闘するほど怒ったのかということだ。共闘は今国会で初めてだという。

川口氏は北京への国際会議に出席した。楊潔篪・国務委員との会談が入ったため、帰国を要求した野党の許可を得ないまま滞在を1日延ばした。

野党だってバカじゃない(バカなことも多いが)。「国益のための延長」に反対したら、世論の理解を得るのは難しいことは分かっているはずだ。でも全野党が一致団結した。なぜなのか。

ポイントは2点ある。

1つ目は、川口氏は政府や国会の代表ではなく、私的な立場で外遊していたということ。2点目は、川口氏が楊潔篪との会談の内容を説明していないことだ。

つまり、極端に言えば、委員長として参院委員会を開いておきながらプライベートでバリ島に行き、友達と遊ぶために滞在の約束を1日延ばしたのと理屈は変わらない。プライベートな行動を国会よりも優先し、「国益」と言いつつその説明をしないのなら、野党が怒るのも無理はないとも思える。

川口氏は元外相で、楊潔篪は中国の外務大臣だ。彼女が行ったのは、完全な外交だ。環境委員長の重職をほっぽり出して外交を優先したら、そら環境委員たちは怒るだろう。「外交をしたいのなら、なぜ環境委員長を引き受けたのか。辞めて一議員としてやれ」というのが野党側の言い分だ。

この問題について「国益と国会ルールの対立」「参院選前の与野党衝突」などと説明はあるが、もっと根本的に解決する必要があるのではないか。

一つは、大臣のイスをたらい回しするような「日本式人事」を改めることだ。外交で力を発揮する人なら、それにふさわしい仕事場を用意すべきだろう。自民党の石破幹事長は「中国要人との会談の方が、わずか5分の委員会よりも大切だ」と言っているが、それならなぜ川口氏を環境委員長にしたのか。

他国には外務大臣や財務大臣を何年も務める人がたくさんいる。彼らは外交や世界経済の舞台で顔を売り、人脈を築いて国益のために働く。毎年のように大臣がコロコロ替わる日本式の人事はさっさとやめるべきだ。これは官僚の人事にも同じことが言える。

2つ目は、国会開会中には常任委員長や大臣の海外渡航を自粛する、というルールそのものをやめること。グローバル化が急速に進み、トップ同士が速やかに決断すべき時代に、このルールは合わない。国会があるから重要な国際会議に日本のトップだけが不在、という場面はいい加減なくさないといけない。

国際舞台で主張することの重要性は政権を担った経験がある民主党も理解しているはずだ。与野党協議で、それこそ「国益」のためにルールを変えるべきだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿