2013年7月9日火曜日

投票率を上げることが本当に大事なら、義務化すればいいだけのことだ


ブラジルでは、選挙で投票するのは義務だ。棄権すると罰金を支払わなければならない。

ブラジル生まれで生後すぐに日本に移り、日本で育った知人がいる。ブラジルで生まれたからブラジル国籍の持ち主だ。

その人がブラジルに住んで働くことになった時、「これまで投票をしてこなかった」として累積の罰金の請求書が来て驚いたという。

投票を義務にしている国は少なくない。ブラジル以外にも、オーストラリア、ベルギー、スイス、シンガポール、ルクセンブルク、イタリア、タイ、メキシコなど、日本人になじみの国々も義務投票制を採用している。

今回の参院選は関心が低く、投票率を上げるにはどうしたらいいのか、という議論があちこちで起きている。選挙管理委員会は多額の税金を使って広報に力を入れている。

熊谷俊人・千葉市長は選挙啓発ポスターについて、「現状にご不満のない方はどうぞ棄権下さい。こちらで全部決めておきますから」くらい言ってもいいのではと思います、とツイッターでつぶやいて論議を呼んだ。

ネット選挙解禁で投票率が上がるかどうかも話題にあがっている。

でも、そんなのは些末なことだと思う。

投票率を上げることが本当に大事だと思うのなら、義務投票制にすればいいだけのことだ。

よく「棄権する権利がある」と主張する人がいるが、言っている意味が分からない。

もし投票したい候補者や政党がなければ白票を投じればいい。それで「投票したい候補がいない」という意思を示すことができる。選挙は有権者が政治に対して意思表示をする場であるから、白票によって十分にその役割を果たすことは可能だ。

投票が義務化されれば、たとえわずかな時間であっても投票先を考えることになる。毎回投票所に足を運ぶことになれば、候補者や政党、政策について関心を持ったり調べたりする人は増えるだろう。

有権者が政治に関心を持つことが民主主義にとって重要だというのなら、投票義務化に反対する理由は見あたらない。

なのに、どうして義務投票制が論じられないのか。

それは、投票率が上がると不都合な人たちがいるからに他ならない。具体的に言えば、公明党は組織票が頼みだから投票率が上がってしまうと当選するのは難しくなる。

彼らは口では「みんな投票に行きましょう」と言うけれど、本音では有権者の多くが投票に行ってもらっては困るのだ。だから自公政権が続く限り、義務投票制が導入されることはない。

義務化されて困るのは公明党だけではない。

いまの政治は、高齢者世代が若い世代に膨大なツケを回すことで成り立っている。

高齢者は年金をしっかりもらって海外旅行に出かけ、次々に建設された老人ホームに入り、あっという間に成立した介護保険制度を存分に利用する。

一方、若い人たちは生まれながらにして国の莫大な借金を背負い、ほとんど受け取ることのない年金を支払わないといけない。老人介護施設はたくさんできたのに対し、保育所はいつまでたっても不足しており、待機児童問題は全く解決しない。

だから、若い人たちがこうした政治の矛盾に気づき、投票に行って反発してもらっては困るのだ。もちろん、学校教育で政治や投票について積極的に教えることはしない。

参院選でも低い投票率のもとで高齢者の票を獲得した候補者や政党が、高齢者のための政治を続けていくことになるだろう。

次世代のために国の将来を考えるという発想は、そこにはない。


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