2013年7月26日金曜日

文字通りスタジアムは揺れた~リベルタドーレス杯決勝


次々と焚かれる発煙筒と鳴りやまないロケット花火。マラニャンスタジアムは煙でかすみ、火薬の臭いが充満した。

リベルタドーレス杯決勝第2戦のアトレチコ・ミネイロ-オリンピア戦。

初戦を0-2で落としているアトレチコはなんとしても2点取らなければならない。序盤から攻め続けた。しかし、攻めは単調だった。クロスを放り込んでは丁寧にはじき返された。それでも、何度も何度も放り込む。

後半開始早々、ついに相手にミスが出た。クロスボールをクリアできず、球はするりとDF陣の間をすり抜けた。ゴール前にいたジョーはただ押し込むだけで良かった。

ここからが本当の勝負になった。攻めるアトレチコに守るオリンピア。絶対に勝つという気迫がぶつかり合った。

それもそうだ。コリンチャンスやサンパウロといった強豪ならともかく、南米では中堅レベルに位置するチームがリベルタドーレスのタイトルを獲ることなんて、可能性は極めて低い。選手たちにとっては、命をかけたサッカー人生に巡ってきた最初で最後のチャンスだ。

どんな手を使ってでも勝つ。オリンピアの選手たちは事あるごとにピッチに倒れ込んで時間を稼いだ。GKは敵陣にボールがあるときに芝生に仰向けに倒れて時間を止めた。

ゆっくり歩いて交代しようとするオリンピア選手を、アトレチコ選手はサイドラインまで背中を押して交代を促した。倒れ込んだ選手をピッチに出すため、ロナウジーニョは自ら担架を運ぼうとした。

必死なのはサポーターも同じだ。アトレチコが大きなタイトルを手にしたのは1971年のブラジル選手権が最後。以降、42年間に渡って我慢の日々を送ってきた。

同じベロオリゾンチのライバル、クルゼイロは2度もリベルタドーレスを獲っている。学校や職場で言い合いになるたびにアトレチコファンは悔しい思いをかみしめ続けていたに違いない。彼らにとっても、一生に一度のチャンスなのだ。

スタジアムの雰囲気を一言で表せば「祈り」だった。

観客席は最後まで「Eu Acredito(俺は信じてる)!」と叫び続けた。
文字通り、スタジアムは揺れた。

これほど情念が渦巻いた試合を、自分は見たことがなかった。

ヨーロッパチャンピオンズリーグに比べると、明らかにレベルは低い。
スピードも技術もパスの精度も。しかし、それを補って余りある情熱が、
ピッチとスタジアムにあった。

土壇場の後半42分、ついにクロスボールがレオナルド・シウバの頭に合った。同点。流れはもう、戻らなかった。

PK戦では両軍の全選手がひざまづいて祈るなか、ロナウジーニョが一人、たたずんで結果を見守っていたのが印象に残った。彼はチームメートがゴールを決めるたびに歩み寄って抱き合った。

前の試合に比べれば、ロナウジーニョの動きは良かった。パスの正確性はさすがのものがある。でも、決勝の2試合を見て確信した。彼はもう、代表では通用しないだろう。

敗れたものの、後半に退場者を出しながらも延長を守り抜いてPK戦に持ち込んだオリンピアの気力は称賛に値する。

南米一を決めるにふさわしい、心が揺さぶられる試合だった。

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