2013年6月28日金曜日

ブラジル社会は暴力に寛容なのか


コンフェデ杯準決勝のブラジル-ウルグアイ戦があったベロオリゾンチでは、同じころに5万人のデモが起きていた。デモ隊は市の中心部から競技場を目指して行進。スタジアムへの侵入を阻む警官隊と衝突した。

あとはお決まりの結末だ。投石し、フェンスを壊そうとするデモ隊に対して警官隊が催涙弾を発射。放火や強奪が起きて混乱に陥る。

翌日の街にはあちこちに破壊の跡が残っていた。スーパーは完全に壊され、銀行も窓ガラスが割られてベニヤ板で覆われていた。放火されて一部が焦げた建物もあった。

ブラジルに広がるデモの背景を考える」で書いた後も、さらに暴力的な傾向は高まっている気がする。デモ行動が発生して以降、デモ関連の死者数は5人になった。

スペイン-イタリア戦でも、競技場の近くまでデモ隊が迫り、警官隊と衝突した。まだ収束する気配がなく、今後増えるかもしれない。

デモについていろんなブラジル人に聞いているのだけど、今までのところ、ぼぼ全員がデモを容認している。そして、デモが暴徒化することについては決まってこういうのだ。「そういうことをするのはごく一部の人間だ」と。

そうだろうか。毎日、各地で繰り広げられているデモはほとんどが最後には破壊活動で終わっている。彼らは準備万端だ。集合した時点からガスマスクを装備したり、サングラスやスカーフで顔を隠したりしている。リュックを背負っており、道具を隠し持っている。最初から暴力をふるう気が満々なのだ。

デモの参加者は彼らについて何も言わず、黙認している。衝突が始まると「暴力反対」と叫んで止めようとする人たちも出てくるけれど、たいてい歯止めにはならない。サンパウロ州庁舎を破壊して逮捕されたのは大学生だった。

デモに関する世論調査によると、暴力について「絶対反対」なのは66%。言い換えれば、3割以上の人たちは状況次第で暴力をふるっても構わないと思っている。

警察に対する不信感もある。警察がデモ隊に対して過剰な暴力をふるう映像は動画サイトにアップされている。

警察の方もデモ隊への嫌悪感があるという。今回のデモは大学生ら比較的裕福な「中間層」が中心だ。安月給で教育レベルも低い現場の警官たちにとってみれば、嫉妬の対象でもある。

彼らからすれば、盗みを働く連中の方が社会階級で言えば親しみを覚える階層なのだ。だから、放火や略奪は見逃してもデモ隊の鎮圧に対しては催涙弾を乱射することになる。

年間5万人が殺されるこの国の人たちは、暴力と隣り合わせに住んでいる。それが日常になると、暴力に対する感覚が麻痺するのかもしれない。

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